あんたって何歳だっけ問題

つい先日母親が家の掃除を手伝ってくれる時にふいに「あんたって何歳だっけ」と聞かれた。

 

「今年で30だよ」

「まだ26だと思ってたわ」

 

生みの母親が私の年齢を完全に忘れているというか認識していないショックに浸りつつ、ふと自分が今年で30であることに少し喪失感を覚える。というのも、二十歳を迎えようとして19歳だった自分はまるで一瞬にしてこの10年という年月をスキップしながら迎えた感覚だ。2010年といえば、アニメでいう「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」や「デュラララ」が流行った時期でもあるし、ゲームでいうならキングダムハーツのBBSやニーアレプリカントが発売された年だ。

そんな10年前の話を思い出すと、なおさらあっという間感もあるし、ふと思ったらあの日々に戻れるなら戻れそうな気もする。でもやっぱり今の自分は19歳のころと比べて年もとれば顔のシワやシミも増えてきて、服のファッションも一通り変わった。物事のプライオリティも変わったし、今はアニメやゲームに多くの時間を費やすこともできないし、何よりも今できることが前よりも断然増えた。好きな時間にでかけても、何に時間をかけても金を使っても、誰に何かを報告する義務はないが、代わりに責任は負うことになった。

 

話をもどして、この母親の「あんた何歳だっけ」問題を話したい。

数ヶ月前に母親からプレゼントされた服を取り上げる。袋から開けてみるとそこにはまっピンクなレーストップスが入っていた。どれくらいまっピンクだったのか。簡単に言えば林家パー子のピンクをもう少し暗くしたくらいの色だ。つまりこのくらいのピンクだ。

えるこは思った。顔には出さずに内心に止めるように思った。

(これ絶対若い子向けじゃね?)、と思った。

(今きたら林家パー子ぐらいに目立っちゃうやんけ、無理だわ)、と。

そのままそのピンクレースは押入れの中で埃をかぶりながら眠っている。きっと朝日を迎える日は永遠とないだろう。いつか私の中で革命が起きて夜な夜な六本木のクラブで夜を明かすことになったら、その時は一緒に朝日を迎えような?と約束をして、先方にはお眠りいただいている。

母は面白いぐらいに娘依存でもあれば過保護である。理由は過去にいろいろとあったのだが、昨日も22時に家へ帰ると伝えたところ、

「電車に乗るタイミング・最寄り駅まで着くタイミング・家についたタイミング」を細かに伝えなければならない。会社でもここまで詳細なレポートをしないのに母上にはこと細くしなければすぐ電話がかかってくる。面白い。

きっと母親の中では「30」という数字はただの数字であって、今後40、50と年を取っていっても私は彼女の中では15のままなのだ。じゃなければ、あのピンクレースは30を迎えようとしている娘には買わない。さすがの林家パー子もあのレースは着ないだろう。いやむしろ着て欲しい。そうすれば匿名でお送りしたいぐらい、あのピンクレースに朝日を見せてやりたい。

 

しかし改め30と自分で答えてしまって、やはり何かしらの喪失感は覚える。あのピンクレースも私が15歳だったらきっと着ていただろう。人とは同じものは着ないという今考えれば痛い中2病みたいなポリシーを持っていた自分なら。それがもう着れない年、世間からの目が痛くなってきた年でもある。最近聞く音楽もZARD宇多田ヒカルamazarashiなどのアニメ中心音楽やFFやオートマタのオーケストラ中心となってしまった。最近流行りの髭男をApple Musicでダウンロードして流している。Pretemderはいい曲だねほんと。